同じNから始まる英字3文字でも、NPOとはまったく異なる世界にあるNFT。このNFTの可能性がNPOをはじめとする非営利組織と実は相性がいいのではないかという言説が少しづつですが広まってきているような気がします。
事例も少なく、確証も何もない、あくまで僕の直感ではあるのですが、最近どうしても気になっているこの潮流について、今のうちに備忘録的に書いておきたいと思い、キーボードを打っています。
「世界を変える」というフレーズはこの10年間、あらゆる場面で何百回と聞いてきました。その中でも特に印象深かったのは、twitterが日本で本格的にはじまってきた2008〜9年頃です。社会起業家というものがまるでスターのように登場した時代、実際このフレーズは異様に熱を帯びていて、ここから世界革命が起こるかも、くらいの熱量をたしかに持っていました。
特にその頃は今のような多様で本格的なSNSは何もなく、人と人との関係がほぼリアルタイムで一瞬でつながるという一点のみを持って、twitterは非常に楽観的に期待されていたように思います。そういうわけで、今でいうソーシャル界隈(そのころはあまりソーシャルという言葉自体もまだ普及していなかった)におけるtwitterも世の中を革新する新しい道具として歓迎されていたように思います。
しかし今やtwitterはむしろ日常や現実そのものであり、人と人との関係がリアルタイムで一瞬でつながるという部分は変わらずあるものの、その役割はその頃の熱量を体現するようなものではなくなっています。
むしろ残念ながら誹謗中傷の温床になったり、偏見差別が飛び交う場所であることもみなさんが認識しているとおりです(無論そうでない部分も多くありますが)。
twitterが最後に革命として機能したのはアラブの春だったと思いますが、その革命もその後は成功したとはいえないような状況になり、それからはtwitterが社会運動にかかせないものとして貢献したとしても、それはあくまでもツールの一部以上のものにはなりえませんでした。これはよくよく考えれば当たり前といえば当たり前かもしれません。
むしろ誹謗中傷に代表されるような悪しき部分は、残念ながらブーストし続けているような気さえあります。
NFTのチャリティの可能性
そして、新しいトレンドのNFTです。改ざん不能、完全な自律分散型のネットワークであることが、お金を民主化したという仮想通貨のポジティブな評価に基づき、揺るぎない信頼性を担保できるという利点を持って、twitterのときと同じような期待感がではじめつつあります。
現在、寄付は善意のみで集められることはなかなか難しくなり、社会的インパクトを実際に起こしているか、また社会に対して何かの具体的な成果をあげているのかといった評価軸での判断も多くなってきました。
NFTの存在するブロックチェーン上では浮き沈みの激しい不安定な投資が瞬間瞬間数多く取り交わされ、何か期待値のあるものに対して一気にお金が流れるといったことが外から見る限り起こっているようにも思えます。まあ、これは自分がクリプトの世界を全くわからないまま無責任にいっていることなので間違えているかもしれませんが。
「NFT チャリティ」と検索するとLINEの暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLVC株式会社が行った香取慎吾さんの寄付プロジェクトの記事で埋め尽くされています。つまり日本では世の中にはまったくそういう動きが起こっていないということも一方で言えます。
欧米、特にアメリカで起こったムーブメントは遅れて日本でもほとんど起こるようになる、ということを信じるとするならば、今アメリカで起こりつつあるNFTによるチャリティは、日本でもいずれ展開されるような日が来るのでは、、と淡く期待してしまいます。
NFTを持ち出さずともアメリカの寄付文化と日本では大きく違うということは、ずっと長い間指摘されてはいますが、それでも新しく動き出そうとする人たちはいるのです。
動きはじめるチャレンジャーたち
「NFT チャリティ」と検索する中で見つけた数少ないアクションとしてこういう記事を見つけました。
「NFT×チャリティ」と未来について ― イケハヤNFTラジオ特別会(10/12)
ご存知イケハヤさん、NPO法人DxP代表の今井紀明さん、NGO/PLAS代表の門田瑠衣子さんのNFTチャリティオークションの話です。
この取組は非常に実験的かつ先鋭的で、今後まだどうなるのかわからない状態ですが、NFTにチャリティの新しい可能性があるよ、というような熱い話をしています。
特に門田さんにおいては、このあと非営利セクターとして、日本で初めてのNFTチャリティの企画を実行してチャレンジをしています。
PLAS NFT CharitySite
現在の状況においては非常に先鋭的なチャレンジといえると思います。なにはともあれ実践・実行しているのは素晴らしいことです。
リンク先の結果を見るとこのチャリティは最初の一歩としては十分意義深く成功してると思われます。
また「クリプトアートとNFTが変えるチャリティ・SDGsへの取り組み」というこれまた最新のチャレンジを行ったのがKizuna NFTチャリティプロジェクトです。
こちらでは欧米の最新事例を紹介しながら日本でもいちはやくこの動きをキャッチアップしているように思えます。
いずれもそこに参加しているのはまだまだ非常に限られた人だけではありますが、とくにPLASの門田さんについては、まず自分がチャレンジして、それを他の多くのNPO/NGOにシェアしていきたいというような発言もされていて、おーとひとり思わず唸ってしまいました。
NPOが持つ、企業にはない大きな可能性
「クリプトアートとNFTが変えるチャリティ・SDGsへの取り組み」このイベントレポートで語られたフレーズの中で、僕が特に印象的に思ったものがこちらです。
活動に理念があったとしても、NPOの方が企業よりお金持ちなんて結構珍しいと思うのですが、DAO(自律分散型組織)の場合は、逆に理念が詰まったNPO的な組織の方が、普通の企業よりも扱える金額が大きくなってくるかもしれません。投資ファンド的な要素とNPO的な要素組み合わせたものが、なおかつ国境を越えて、実際に影響力を持つということが近々起きてくると思います。
絢斗 優 (あやと ゆう) 氏 CryptoArtist / Kizuna Blockchain PROceed
https://withb.co.jp/contents/26695/
国際的なNGOとしてはたしかに有利かもしれないけど、草の根NPOは不利なのでは、いう懸念点は多少ありますが、それでもブロックチェーンの真ん中でクリプトアート活動をしている方からの、こういった希望ある発言は非常に頼もしい限りです。
さて、今回の記事は記事にならないような断片的な部分ばかりになりましたが、2021年秋の備忘録程度に思っていただければ幸いです。
この後はどう展開されていくのか自分ではまるでわかりませんが、例えばtwitterが問題を含んでいるとしても、今の生活インフラに欠かせない存在になっていることを考えれば、あるいはクラファンが市民権を得て資金調達のカジュアルな方法を確立できたと考えれば、NFTもチャリティの文脈として、なんらかの未来を切り開いていけるのではないかと、やはり期待しています。
その先、NFTがtwitterのような日常的な風景になろうとも、むしろその日常が寄付が当たり前になっている世界だとしたら、それはそれで素敵なことではないでしょうか。
今後ソーシャルの文脈でどのように変化していくか、そんな可能性を期待しつつ、このトピックは引き続きウォッチしていこうと思います。