デザインは人類の営みと関係性のすべてを再構築する叡智

恥ずかしながら完全にノーマークでした。

日本の知性の総本山東大が、ここまで本質的にデザインというものに力をいれていると知りませんでした。東京大学「カレッジ・オブ・デザイン」の創設です。

今日たまたまSNSのタイムラインに流れていた東京大学の取り組むデザインについてのフォーラムの記事。これにおおいに驚きと勇気をもらいました。

昔からデザインというものは、揶揄的に言うとある意味便利に扱われがちでした。誰も彼もがデザインという言葉を、自分たちに便利な文脈で利用し続けていて、そういう意味であらゆる業界から重宝されてきました。
物理的なプロダクトが対象としてあるような家電業界や建築業界でいうのならいいですが、ITやコンサルはもちろん、金融から教育まであらゆる部分で便利に使われ続けてきました。

デザインの便利さと汎用性
デザイナーならば、ほぼ99.9%の人が、デザインは色や形のことではないということを重々わかっています。しかし多くのデザイナーは実際においては色や形を配置しながら、クライアントのやもすれば無茶難題を必死で乗り越えるという努力を繰り返すような日常がきっと多いはずです。
デザイナーにおいて水や空気と同じくらい体になじみきっているこのデザインという概念を、ある意味門外漢のコンサルや金融関連でカジュアルに使われるときに感じる、なんともいえない胡散臭さと軽々しさに居心地の悪さを感じるフィジカルな意味でのデザイナーは多いはずです。
何故ならば、そういうコンテキストの多くの場合は、自分たちのビジネスにどう役に立つのか、自分たちのビジネスにどう利用できるのかというずるさが、どうしても透けて見える事が多いからにほかなりません。

ですから、時折タイムラインに流れてくる〇〇デザインフォーラム、〇〇の未来のデザイン、デザインシンキング〇〇のようなタイトルのイベントは、ほぼすべてスルーしがちですが、今回見つけたのが東京大学だったので、さすがにおやっ?と思って記事を読んでみたのです。


人類の営みと関係性のすべて
東大の総長、藤井氏自ら登壇とはただごとではない。と興味深く記事を読んでいきました。
記事を読む限り、とても広範な領域を網羅した内容のようでした。研究、都市計画、教育、AI、テクノロジーetc..またその座組も多様性とコミュニケーションを重視し、ジェンダーや社会属性を超えた超包括的なもので、僕の頭の中に浮かんだのは、「太平洋くらい巨大な風呂敷、たためるのか、その大きさで!」という感じでした。まるでこれでは人類の営みと関係性のすべてじゃないか!とすら思いました。

これらを総括する戦略として「デザイン」という言葉を意図的に使っているとしたら、デザインを本質的に極め続けることは、人が人のままで違う次元にまで昇華するための道具じゃないのかとすら思いました。人類が人類のかたちのままで神にすら近づくのではないか。いやいや、すみません、藤井総長はそんな話はしていません!
なんというかデザインが扱う領域の広さと責任と可能性、あまりにも壮大過ぎて僕の頭では把握できません。しかし、少なくとも前半で話したような自分たちの会社や業界が有利に働くような道具として扱ってるような軽々しさはまるでありませんでした。僕は東大の吟侍と覚悟を感じずにはいられませんでした。

東京大学が2027年に開校する予定の「カレッジ・オブ・デザイン」は、調べたところ以下のような概要があるようです。

・授業はすべて英語で実施
・学士課程&修士課程一貫の5年制課程
・学生自身がテーマを選定した上で気候変動や医療、教育などさまざまな分野を横断的に学べるようにする
・デザインの基本的な知識技能を学びつつ、年次があがるにつれてプロジェクトを通して実践していく
・修士課程はチームプロジェクトと個人プロジェクトの2本立て
・学士課程では個人の関心や問題意識に従い分野選択を行う。現状想定されているのは以下の6領域
 - 環境持続可能性
 - メディア コミュニケーション
 - AI テクノロジー
 - アート人文科学
 - ビジネス経済
 - ヘルスケア ウェルビーング


ざくっと感じるところはリベラルアーツの超絶最新アップデート版というようなイメージでしょうか。それにしてもここまでストレートに多岐にわたる可能性、包括性、先進性についての問題意識を「デザイン」という言葉に託していることに大いなる驚きを感じます。
なにはともあれ、この熱い動画を御覧ください!

Shape the Future, Design for Tomorrow.

UTokyo | Tokyo Forum 2024 | Opening Remarks by FUJII Teruo

そして、この動画を見て強く感じることは、政治的にも自然科学的にも、経済的にも、この荒廃しきった今の地球上で起きていることすべての問題に、人類の英知をあらためて結集し、まさに「デザイン」で解決を試みようとしているのではないか。この尋常ではない使命感と崇高さになんだか涙すら出てきました。


デザインで悪魔的なものに対抗する?
トランプ大統領やイーロン・マスクに代表される、人類が生み出したお金と権力いう悪魔(的に少なくとも今のところ僕にはみえるもの。今後の社会変化についてはいいところもあると思いますし、まだまだどうかはわからないですが)。それが今まさにアメリカにおいては、あらゆる「DEI」を破壊しようとしています。カレッジ・オブ・デザインが考える「デザイン」は、このような人類自らが生み出した悪魔的なものに対抗すべく、人類の英知をあらためて融合・結晶させて、こちらもこちらで、まさに人類が神を生み出して悪魔に対抗しようとしているのではないかとすら感じてしまいました。
この取り組みは今のアメリカ、ロシア、中国などではおそらくほぼ実現が難しそうな取り組みであり、日本がこれを実践し、リーダーシップを発揮するとなれば、それは日本自身のおおいなる希望にもなりうる。
まあ、これは僕の飛躍しすぎかもですが。

でももし、アメリカもそしていわずもがな中国もロシアも悪魔的なものが幅を利かせているのに対して、「デザイン」である意味結果的に対抗できるのであれば、こんなに胸熱な未来はありません。

ああ、自分はもういつでも死ねそうです。

自分は「デザインの力を、社会の力に」というミッションで今日もテキストを修正したり、写真をレタッチしたり、見積書を作成したりしています。自分の日常は、そういう小さいことばかりの連続ですがこれは非常に意味と意義のあることだと思っています。そして藤井氏のようにデザインの生み出す力と未来を信じています。

勇気をもらいました。
今までどおり地に足をつけこれからも頑張ろうと思いました。
そしてハチドリのごとく、自分には自分のやるべきことがあると思いました。

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